ニューカッスル買収問題解説 前編
著者:アルフレッド🏴 翻訳:ルナ🇯🇵
やあ僕だよ。
本公演で12回目を迎えましたニューカッスル公演。
はじめに
2020年4月から2021年10月にかけて行われたニューカッスル・ユナイテッドの買収問題
これは近年のフットボール界において最も注目された出来事の一つになったね。
今回はこの件について解説していくよ。
今日の話は正直難しい。
政治や複数の企業、法律やお金関連について触れることになるからね。
でも大丈夫!
この刺々しい複雑な問題も僕の素敵なフットボール愛で浄化し、出来る限り分かりやすく、そして面白く解説できるように頑張るよ!
是非最後までみていってね!
クラブ買収を目論む3つの組織
ニューカッスルユナイテッドがパブリックインベストメントファンド、通称PIFによって買収されたという話は日本にいるみんなの眼や耳に届いたことだと思う。
正確にはPIF、PCPキャピタルパートナーズ、ルーベンブラザースこれら3社から成るコンソーシアムに買収されたという話だね。
コンソーシアムっていうのは複数の個人や企業などが共同で特定の目的を達成するために結成した連合体のことを言うよ。
目的を達成するまで協力関係を結ぼうよ!っていうことだね。
合併とは別のものだ。
協力関係を結んだこの3社について少し説明するね。
PCPキャピタルパートナーズっていうのはアマンダ・ステーブリーさんという実業家が持つ企業。
彼女は中東の投資家との間に強力なコネクションを持っていて、2008年のマンチェスターシティ買収にも関与したと言われている。
ルーベンブラザーズはデビット・ルーベンとサイモン・ルーベンの起業家のことを指していて,主に不動産投資等に力をいれているみたい。
サンデータイムズによると、純資産は244億ポンドでイギリス国内で4番目に裕福な一族なんだそうだ。
そしてPIF
彼らはサウジアラビアの政府系ファンドで世界最大の政府系ファンドの一つと言われている。
政府系ファンドって言うのは政府が資金を出資して投資活動を行なうための組織のことだよ。
ニューカッスルユナイテッドの株式をPIFが80%も買い取り、残り20%をPCPキャピタルパートナーズとルーベンブラザーズが仲良く分け合う形になったため、報道では「サウジの政府系ファンドであるPIFが買収!!」という見出しのニュースが暴れまくってみんなの印象に残ったというわけ。
皆が見たニュースにもPCPキャピタルパートナーズやルーベンブラザーズについてはあまり語られていなかったんじゃないかな。
ちなみに、このPIFは日本の企業にも手広く投資している。
あの任天堂の株式を8%も保有していたりね。
これらの組織とニューカッスルユナイテッドの間で行われた取引が世間に公表されたのは2020年4月14日.
PIFを始めとしたコンソーシアム(以降はPIFと呼びます)がニューカッスル・ユナイテッドを3億ポンドで買収する意向を表明した事からこの1件は始まった。
この件を報じるイギリス高級紙:The Guardian
https://www.theguardian.com/football/2020/apr/14/newcastle-owner-mike-ashley-in-advanced-talks-to-sell-club-for-350m
難航する審査
買収というのは、買収を計画している組織とクラブの代表だけで成立させられるものではない。
買収を計画している組織がプレミアリーグに所属しているクラブのオーナーになるに相応しい組織又は人物なのか、これについてリーグの理事会からテストを受ける必要があるんだ。
これをOwners’ & Directors’ Testと言うよ。
第1報が届いたときにはこの審査は既に最終審査まで到達していると報道されたから、フットボールファンは「超展開すぎる!!」ってびっくりしたんだよね!
でもね、ここから審査は難航するんだ。
この買収問題が世間に公表されて以降、世界の様々な個人や組織から賛否が飛び交った。
まずプレミアリーグに所属している他クラブはもちろん嫌だよね。
ライバルチームが莫大な資金を手にするんだもん。
第三回限定公演でもデータで示したように、プレミアリーグというのは他のリーグと比べて上位と下位のレベル差が大きく開いているリーグ。
既にパワーバランスが壊れかけているこのリーグに新たな破壊者を招くべきではない!!
こういう意見が他のサポーターから散見された。
買収に大反対するカタール国営メディアグループ
そして最も反対の声が大きかった組織はカタールの国営メディアグループであるbeIN Sports
このカタールのスポーツ専門局は中東と北アフリカのMENA地域においてプレミアリーグを放映する権利を持つ。
それどころかプレミアリーグ放映権の契約の中でも最も高額で契約してる国外組織がこのbeIN Sports!
さらにはこの契約の更新が2020年の12月に行われる計画が既に存在していたようだ。
それはつまり、プレミアリーグにとっては最も大切にしたいお客さんというわけ。
ちょっとやらしい話だけどねw
でもビジネスだから当然っちゃ当然だね。
ではなぜ、カタールのbeIN SportsはPIFがニューカッスル・ユナイテッドを買収する事を嫌がったのか。
それは、この当時サウジとカタールは地政学的な緊張関係にあったということと、サウジ側がbeIN Sportsに向けて行った海賊行為に対する遺恨が理由だね。
外交紛争について語りだすとこのチャンネルが政治チャンネル化するからそこは割愛するね。
この2カ国は政治関連で揉めていた。これだけわかっていれば大丈夫さ。
今日みんなに語るべきなのはサウジ側が行った海賊行為についてさ。
物議を醸した「インからアウト」
さっきも言ったようにカタールに拠点を置くメディアグループであるbeIN Sportsは、中東でプレミアリーグを放送する権利を保有しているんだけど、サウジ政府は2017年中頃からbeIN Sportsによるサウジアラビアでの放送を禁止したんだ。
beIN Sportsによる放送が禁止された直後、サウジアラビアで海賊版サービスbeoutQが出現した。
このbeoutQというのは、beIN Sportsで放送されている物をリブランドして番組を構成していた放送局。
つまりはbeIN Sportsが大金を払って合法的に放送しているプレミアリーグや他のスポーツ番組を盗み、それをサウジカラーにリブランドして自国で放送していたということさ。
beIN Sportsは当然怒る。
beIN Sportsがプレミアリーグの放映権料を買うという投資行為はサウジという大変魅力的なマーケットも巻き込めることを加味してゴーサインが出されたはずだからね。
beoutQの出現はbeINに大変大きな経済的損害を与えた。
beIN Sportsはこれらの事実を盾にして、自社のチャンネルでPIFのニューカッスル買収問題に対して熱心な公共ロビー活動を定期的に行った。
好きじゃない政府が主導のファンドグループであるPIFがプレミアリーグに参入するなんてことはbeIN Sportsにとっては許されないことなんだ。
だから彼らはPIFがニューカッスルを買収するこの1件に大きな声でノーというんだね。
beINの行いは理解できる行為だよね。
「Hey!Mr!サウジは政治的にもたくさんの問題を抱えているし、過去にはプレミアリーグを違法で放送してた事実もあるんですよ?そんな組織にこの素晴らしいリーグのクラブオーナーを任せてよろしいんですかい?一応言っておきますが、我々はあなたたちに対して最もお金を払っている国外組織ですよ。分かってます?」って感じかな。しらんけどw
beINの主張に対して、サウジ側は「違法放送についてはしっかりと取り締まりを行ってる!beoutQの閉鎖とその後の海賊行為への規制はそれを十分に証明しているだろ!ほんでPIFは政府とは別組織な。一緒くたにせんといてよろしく」的な感じで反論している。
実際にbeoutQは2019 年 8 月に閉鎖されている。
なんだけど、こんなこと言われてもみんなははいそうですかって引き下がれる?
木霊する否定的な声
でね、PIFによるニューカッスル買収について、Amnesty Internationalもこの買収計画への懸念を表明したんだ。
アムネスティ・インターナショナルというのは国際連合との協議資格をもつ非政府組織で、人権問題に対して熱心に取り組んでいる組織のことだね。
拠点はロンドンにある。
アムネスティ・インターナショナルは、サウジアラビアが近年国際スポーツに多額の投資を行っている理由は自国の人権問題を覆い隠す取り組みの一環であると表明し、今回の審査に対して、サウジの人権問題を十分考慮するよう警告したんだ。
「Hey!Mr!これはスポーツウォッシングですよ!サウジに対して世間が持つ悪いイメージを払拭するためにあなたたちを利用しようとしているのですよ!国を代表する組織であることの自覚を持ってこの件に当たってくださいね」こんな感じかな。
複数の組織がこの問題に対して批判的な声明を対しサウジ側は、PIFが政府から独立した法人であると主張している。
このようなことがあり、5月には買収成立までまもなくと報道されたニューカッスル買収問題は泥沼化し、審査は大変難航したんだ
導き出された結論
そして迎えた2020年7月30日
コンソーシアムはプレミアリーグがこの買収を長期に渡って延期し続けたことにより、買収計画を維持することが困難になったため、ニューカッスルを買収するに至らなかったと声明を発表。
というところで前編はおしまい!
おわりに
どう?結構複雑でしょ?
この買収問題の主役はニューカッスルとサウジ、それからプレミアリーグっていうのが世間の一般的な認識だと思うけど、実はカタールも主役級の動きを見せていたんだね。
複数の組織の様々な思惑が交錯することになったこの問題。
果たしてどのようなルートをたどり、どのような結末にたどり着くのか。
後編を楽しみにしていてね!
それでは今回の公演に幕を下ろそう。
今日も最後まで見てくれてほんまぐらしあす!
また次の公演で、ちゃお!
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